書 名刊行№54(1)2種類の学術研究書シリーズ―学術叢書とエウプラクシス叢書(2)審査のプロセスと採否の最終決定について(3)出版企画委員会の役割(4)応募資格の拡大について学術研究書出版制度については2015年度に以下の内容にあらためて整備し、現在に至っている。2021年度には6冊の学術研究書を発行した。「早稲田大学学術叢書」は、本学のアカデミック・ステイタスの維持・向上を目的とし、良質な学術研究書の出版機会を提供している。また、以前の「早稲田大学モノグラフ」に替わって、新鋭研究者のための叢書「早稲田大学エウプラクシス叢書」(「エウプラクシス」は、ギリシャ語で「成功を収めた実績」の意味)を発刊し、出版経験の少ない研究者に対して出版機会を提供するため、出版部の専門の編集者が入稿から刊行まで、原稿の完成に向けて支援する体制を作っている。いずれも上製本のA5判とし、ペ―ジ数、字数などの詳細は募集要項に記載している。「書面審査」では、学内外の複数の専門審査員に、原稿と提出書類に基づく審査および評価を行っている。専門審査員は、応募分野の専門研究者を中心に研究者デ―タベ―スなどから抽出し選定している。学位論文をベ―スにしている場合は、指導教員などの関係者は除き、公正性を維持している。「書面審査」による評価点に、出版物としての市場性の観点から出版部編集者の意見を加え、研究推進担当副総長および文化推進担当理事が最終決定を行っている。委員会は、文化推進を担当する理事からの諮問を受けて、レベルの高い学術文化情報の発信、国際社会における本学のアカデミック・ステイタスの向上を目指して、この制度における学術書と学内外の優れた学術研究成果の応募促進のために審議する。上記の改善に伴い、「早稲田大学学術叢書」および「早稲田大学エウプラクシス叢書」の応募資格を当初より拡大し、募集要項、審査要領などの内容を見直し、現在に至る(募集要項の詳細については、ウェブサイト「早稲田文化」の学術研究書出版支援の欄を参照)。刊行№学術叢書1濱川栄『中国古代の社会と黄河』学術叢書2真辺将之『東京専門学校の研究』学術叢書3中垣啓『命題的推論の理論』学術叢書4堀真清『一亡命者の記録』学術叢書5藤井千春『ジョン・デューイの経験主義哲学における思考論』学術叢書6鳥越皓之『霞ヶ浦の環境と水辺の暮らし』学術叢書7山内晴子『朝河貫一論』学術叢書8金孝淑『源氏物語の言葉と異国』学術叢書9鈴木勘一郎『経営変革と組織ダイナミズム』学術叢書10佐藤洋一『帝政期のウラジオストク』学術叢書11五十嵐誠一『民主化と市民社会の新地平』学術叢書12内田悦生・下田一太(コラム執筆)『石が語るアンコール遺跡』学術叢書13青木雅浩『モンゴル近現代史研究』学術叢書14飯山知保『金元時代の華北社会と科挙制度』学術叢書15上野和昭『平曲譜本による近世京都アクセントの史的研究』学術叢書16Ayako Yoshino『Pageant Fever』学術叢書17河西宏祐『全契約社員の正社員化』学術叢書18市川熹『対話のことばの科学』学術叢書19伊藤りさ『人形浄瑠璃のドラマツルギー』学術叢書20石濱裕美子『清朝とチベット仏教』学術叢書21黒崎剛『ヘーゲル・未完の弁証法』活動や多様な文化事業の成果を効果的に発信するために、早稲田大学と早稲田大学出版部は連携してきた。出版事業が学術情報発信の基盤をなすという認識から、大学が直接これに関わって、自らの使命を果たすことが、学術研究書出版制度の趣旨であるといえる。書 名学術叢書22片木淳『日独比較研究 市町村合併』学術叢書23Rieko Suzuki『Negotiating History』学術叢書24杵渕博樹『人類は原子力で滅亡した』学術叢書25奥野武志『兵式体操成立史の研究』学術叢書26井黒忍『分水と支配』学術叢書27岩佐壯四郎『島村抱月の文藝批評と美学理論』学術叢書28高橋弘幸『企業競争力と人材技能』学術叢書29高橋勝幸『アジア冷戦に挑んだ平和運動』学術叢書30小松志朗『人道的介入』学術叢書31渡邉将智『後漢政治制度の研究』学術叢書32石井裕晶『制度変革の政治経済過程』学術叢書33森佳子『オッフェンバックと大衆芸術』学術叢書34北山夕華『英国のシティズンシップ教育』学術叢書35Yoshio Ueno『An Automodular View of English Grammar』学術叢書36森祐司『地域銀行の経営行動』学術叢書37竹中晃二『アクティブ・ライフスタイルの構築』学術叢書38渡邊詞男『格差社会の住宅政策』学術叢書39岩田圭一『アリストテレスの存在論』学術叢書40藤岡典夫『環境リスク管理の法原則』学術叢書41陳丹舟『中国独占禁止法―法体系とカルテル規制の研究』学術叢書42上野義雄『An Automodular View of Ellipsis』 1.学術情報発信の基盤としての出版事業2008年度からスタ―トした学術研究書出版制度は、「大学の研究教育の内容やその水準を直接に体現する手段のひとつであり、当該大学にとって枢要な使命を担う」と位置付け、その充実こそが、大学全体のアカデミック・ステイタスの維持・向上に直結するという考えを示してきた。これまで研究教育 2.学術研究書出版制度について学術叢書刊行一覧(2009年3月~2021年3月)
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