Annual_Report2021
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文化推進担当理事  渡 邉 義 浩(文学学術院教授)05早稲田大学は、建学以来、積み重ねてきた歴史と伝統を通して、日本社会とその文化に貢献してきました。その蓄積は、しばしば早稲田らしさ、あるいは「早稲田文化」と称され、在学生、教職員、卒業生を含め広く早稲田関係者の誇りを醸成してきました。文化推進部は「早稲田文化」の発信の中心的な役割を担うとともに、学生・校友・地域へと、広く開かれた連携による「知」の共創と創出を図りながら社会に貢献することを目指し、2007年に設置されました。従来から独自に展開してきた坪内博士記念演劇博物館、會津八一記念博物館、大学史資料センターの三機関に、文化推進部直下の事務組織としての文化企画課を加え、それぞれが独自の役割を担いつつも、それらが早稲田における「文化の束」として一体となって活動しています。早稲田大学は、国宝2件・重要文化財7件・重要美術品8件を含む美術品・書画・博物資料・図書資料・映像資料など、500万点以上を所蔵しています。これらは早稲田文化の核をなす貴重な文化資産であり、文化推進部では、これらの資源の公開と活用に積極的に取り組むことにしています。その際、文化活動を展開する上で、充実した文化施設は不可欠です。まず、2014年に「ワセダギャラリー」を27号館地下1階にリニューアルオープン、2015年に同館1階を改修してショーウィンドウスペースを設置するなど、教職員が利用できる文化活動の拠点を拡充。2018年3月に既存の坪内博士記念演劇博物館、會津八一記念博物館に加え、「早稲田大学歴史館」を開館し、本学の歴史(過去・現在・未来)に関する資料や情報を、単なる通史の平板な陳列ではなく、来館者がそれぞれの関心に応じて新たな発見ができるよう、多様な切り口で提示。2019年3月に戸山キャンパス「早稲田アリーナ」内に「早稲田スポーツミュージアム」を開設し、長い歴史を彩る栄光のシーンや象徴的なエピソード等を通じて、「早稲田スポーツ」の持つ、比類なき個性や魅力を体感できる施設としました。2020年10月には、埼玉県の本庄キャンパスに「本庄早稲田の杜ミュージアム」を開館し、本庄市と早稲田大学は、ここを地域文化の拠点の中核施設として、本庄の歴史と文化、本学の持つ民族造形美術品などを最新の研究成果とともに公開しています。そして、2021年10月に、国際文学館(村上春樹ライブラリー)を開館、「村上春樹文学」「国際文学」「翻訳文学」の研究拠点として、ご挨拶充実した研究環境と交流の場を提供してまいります。早稲田大学では、2032年の創立150周年に向けて中長期計画「WasedaVision150」を策定し、理想の大学像を打ち立てるための各種プロジェクトを検討・実施しており、文化推進部でも「早稲田らしさと誇りの醸成をめざして─早稲田文化の推進」を核心戦略の一つに掲げています。その目的は、「1.早稲田文化とは何かをあらためて確認するとともに、その充実と展開のプロセスを明らかにすること」、「2.早稲田文化を早稲田らしさの評価につなげ、その評価を高めること」、「3.早稲田の誇りの一層の醸成をしていくこと」にあり、各目的の実現を通して、新たな文化の創成に寄与することを目指します。具体的には、この目的の実現のために9つのプロジェクトを立ち上げ、独創的な事業に取り組んでいます。①文化・芸術の推進とキャンパスからの文化発信プロジェクト、②地域との連携による文化発信と施設の有効活用プロジェクト、③バーチャルミュージアム─文化資源データベース公開の強化・拡充プロジェクト、④早稲田大学百五十年史編纂プロジェクト、⑤早稲田スポーツの新たな展開プロジェクト、⑥早稲田らしさと誇りの探求プロジェクト、⑦ワセダ演劇の発信力強化プロジェクト、⑧国際文学館開設プロジェクト、⑨柳井正イニシアティブの推進─日本文学・文化のグローバル化プロジェクトです。2021年度は、前年度から続く新型コロナウイルス感染拡大の中でも、オンラインへの切り替え、データベースなどの拡充・活用の推進などにより、プロジェクトを着実に進めることができました。このように、大学の研究・教育の活動や、そこに関わる教職員・学生から生成される「文化」を発信することは、大学と社会の結びつきをより強め、ひいては社会の豊かさに貢献すると確信しており、そこに文化推進部の真にして無二の役割があると考えています。東西古今の「文化の潮」が渦巻く早稲田からの力強い文化発信と、早稲田の文化が未来の世代へ承け継がれていくよう、歩みを止めることなく、これからもその取り組みに邁進してまいります。「早稲田文化」はスポーツや科学などの分野をも含み、学生・卒業生の活動・活躍も早稲田文化の重要な構成要素です。また、本学の校友だけではなく、広く社会一般の方々にも理解と共感を得て、早稲田文化を拡げていきたいと考えています。今後とも本学の文化事業へのご理解とご支援を心からお願い申し上げます。文化推進部年報2021年度版の刊行にあたって文化推進部

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